創世記32:11‐12 どうか私の兄、エサウの手から私を救い出してください。彼が来て、私をはじめ母や子どもたちまでも打ちはしないかと、私は彼を恐れているのです。あなたはかつて『わたしは必ずあなたをしあわせにし、あなたの子孫を多くて数えきれない海の砂のようにする』と仰せられました。
前回からの続き…
訓練の目的
何年たっても変わらない罪深い私。そんな自分から救われるのは、鍛錬・訓練によるものではなく結局は恵みによるのです。
しかし、そう考えるとこれまでの何年もかけて向き合わせされた神様の訓練は何だったのか?という問いが生まれます。
もちろん「神の訓練」がまったく人格を磨かないわけではありません。へブル5章や12章によると、神の訓練は私達を「善悪を見分ける者とし、神の聖さに与らせ、義と平安の実を結ばせる」とあります。この地上にある人の訓練が私達を磨き成長させるなら、神様がして下さる訓練ほど私達を成長させるものはないことも確かです。
それでも、私達が理解しなければならないとは、訓練によって「罪の性質」は克服出来ないのです。
もし神様の施してくれる訓練プログラムを忠実にこなすことで人が罪に勝利できるなら、十字架は必要でなくなり、神様の訓練が凝縮されている「主の律法」を忠実に守れば罪に勝てるはずなのです。
しかし神の民イスラエルは何千年と律法に従いましたが、罪に勝てませんでした。
これらのことを見つめながら、パウロは「律法(神のみ言葉による訓練)」の最終目的をこう語りました。
ガラテヤ3:24 こうして、律法は私たちをキリストに導く養育係となりました。
律法の最終的な目的は私達をキリストに導くことなのです。つまり、神様の訓練の根本的な目的は、私達を罪を克服の出来る者に成長させることではく、私達を罪から救い出して下さるイエス・キリストにいかなる時でも信仰の目を挙げることが出来るようになることが目的なのです。
訓練されたヤコブ
ヤコブは20年以上にわたるラバンの下で神様の訓練に与りましましたが、結局、その根本的な性質は変わりませんでした。彼は相変わらず「ヤコブ:踵を掴む者」であり、生き残るために自力でもがき続ける者でした。しかし、20年以上の神様の訓練を通って来た彼が一点だけ昔と変わった姿が書かれています。それは「救いを求めて祈るヤコブの姿」です。
彼は宿営を二つに分けてける等、生き残るためにひとしきり自分の力でもがいた後、ヤコブはこう祈っています。
創世記32:9‐12 そうしてヤコブは言った。「私の父アブラハムの神、私の父イサクの神よ。かつて私に『あなたの生まれ故郷に帰れ。わたしはあなたをしあわせにする』と仰せられた主よ。私はあなたがしもべに賜ったすべての恵みとまことを受けるに足りない者です。私は自分の杖一本だけを持って、このヨルダンを渡りましたが、今は、二つの宿営を持つようになったのです。
どうか私の兄、エサウの手から私を救い出してください。彼が来て、私をはじめ母や子どもたちまでも打ちはしないかと、私は彼を恐れているのです。あなたはかつて『わたしは必ずあなたをしあわせにし、あなたの子孫を多くて数えきれない海の砂のようにする』と仰せられました。」
何とか生き抜こうと自分でもがく半面、主に救いを求めて祈るヤコブ。この祈るヤコブの姿は20年前にはない姿でした。
これが「神様の訓練」の結果なのです。そして、これこそ訓練の大切な到達点なのです。どんな困難の中にあっても、どんなに変わらない愚かな自分がいても、恵みの主を思い出し、信仰の目を上げて「主よ、助けて下さい。」と祈ることが出来る。これこそ神の訓練で磨かれた人の姿のです。
ヤコブはこの祈りを経て「ペルエルへの経験」、つまり彼が主にあって「ヤコブからイスラエル、踵を掴む者から神の王子へ」と新しくされる経験、変わることの出来ない罪人の自分が主にあって新しくされ、救い出されていく経験へと導かれていきます。
訓練で得るもの間違えるな
私達もヤコブと同じように神様の訓練に与りますが、もし私達が訓練で得るものを罪に打ち勝つ人間に成長していくことと勘違いしているなら、私達は長い訓練の先で自分に失望させられるでしょう。
下手すると、「こんなに神様に従って変われないなら、信仰生活なんて意味がないのでは?」との思いに囚われてしまうかもしれません。
訓練の最終目的を間違えてはなりません。神様の訓練とは「スーパーマンみないなクリスチャンになるため」にあるのではく、「私達がどのような中にあっても救い主イエス・キリストに信仰の目を上げて行くことが出来るようになる」ことが目的なのです。
つまり、訓練とは「イエス・キリストにある救いの恵みを生きる」ためにあるのです。
もがき続けた両手を上げて、純粋に救い主イエス・キリストに信仰の目を上げて行くこと、それこそが神様の訓練で導かれる場所であり、私たちが得るものなのです。
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